奥田元宋作品
屹(きつ)
夜空に溶け込むような暗い赤で描かれた山容は、何物も寄せ付けないかのような険しさを感じさせます。月は限りなく小さく描かれていますが、漆黒の空の中でその姿が際立って見えます。本作は赤と黒を基調として限られた顔料で描かれており、多彩な色を駆使して風景画を描いてきた元宋としては異色の作品ですが、この時期は本格的な水墨画制作に着手していた事もあり、黒と白で世界を構築する水墨の表現に通ずると言えるでしょう。過去のスケッチや岩の形状から陸中海岸がモデルと思われる本作品は、元宋の生前最後の日展出品作となりました。
作品情報
制作年:2002(平成14)年 改組第34回日展
材質・形状:紙本彩色・額装
サイズ:178.0cm×221.0cm