奥田元宋作品
夕しじま(ゆうしじま)
紅葉の木々が湖岸ぎりぎりにまで迫り、赤い葉が暗い水面ににじむように映り込んでいる情景を描いた作品です。赤一色ではなく、緑や黄色の葉をつけた木々を配し、細かく絵の具を重ねることで、湖面に迫り出した木々にリアルな量感と奥行きを感じさせます。その一方で山頂は霞がかる表現で描かれ、新朦朧体という言葉が似合う幽玄な雰囲気を漂わせています。元宋はこの作品と似た構図の絵をいくつか描いています。かすんだ空がゆったりとした空気と柔らかな光を演出し、鏡のような水面が夕刻の静けさを表すことで、神秘的な世界を描き出しています。
作品情報
制作年:1995(平成7)年 改組第27回日展
材質・形状:紙本彩色・額装
サイズ:178.0cm×221.0cm