奥田元宋作品
新雪一ノ倉(しんせついちのくら)
夜空の中に新雪に覆われた頂が神秘的に浮かび上がり、量感ある紅葉は画面手前に広がるようにして画面を二分しています。新雪の白さはやがてくる冬の厳しさと空気の冷たさを、それに対するように紅葉の赤は秋の豊かさを感じさせます。
群馬県と新潟県の境にある谷川岳の一ノ倉沢をモチーフとし、山の稜線や裾野の形は実際の一ノ倉沢とほぼ同じで、写生に忠実な構図といえます。しかし、小さな月明かりの下で輝く紅葉は現実ばなれした景色です。「写生に基づいていない絵は真実味に乏しいし、写実一辺倒の絵では芸術性の高さに欠ける」という元宋の言葉を表わしているかのようです。
作品情報
制作年:1992(平成4)年 改組第24回日展
材質・形状:紙本彩色・額装
サイズ:176.0cm×222.0cm