奥田元宋作品
立夏(りっか)
緑を基調としつつ色とりどりの花木を配し、色彩対比を明確に見せながら庭の情景を描いています。フランス・ナビ派の画家ピエール・ボナールの影響を受け、洋画風の表現を追求していた時期の作品で、油彩に近い筆致で描かれた植物や庭石は極限まで単純化された形態となっていますが、フジの花を乗せる支え木のバランスや、アカマツを引き立てる様に前面に生える低い木など、工夫を凝らした庭園の造りがうかがえます。構図は客観的な写生に基づいたものと考えられますが、明瞭な色使いと極限まで単純化された構図は、自然の中から抽象を取り出すというナビ派の考えに近い作風といえるでしょう。
作品情報
制作年:1955(昭和30)年 第11回日展
材質・形状:紙本彩色・額装
サイズ:129.3cm×182.7cm