奥田小由女作品
碑(いしぶみ)
胡粉地のなめらかさと造形性の粋美を追及した『白の時代』初期の、光風会に出品しE氏賞を受賞した作品です。この時期は丸みを帯びつつもエッジの利いた角型の構造をした作品が他にも見られ、抽象的な石材彫刻を思わせるようなフォルムが特徴的です。一枚岩からなるマッスを思わせる立体は、よくみると女性が組み合わさった造形であることがわかります。同年の作で、前回紹介した《潮》の流動的な作風と比べると、女性の身体に定形性が見られます。同じようなモチーフながら異なる制作テーマを実施する、自身の造形の可能性を追求する姿勢がみてとれます。
白の時代は主に白一色の抽象的な造形が中心で、後に色彩豊かな女性像へと作風が変化していきます。しかし、女性表現の追求というところに、小由女作品の一貫したテーマがあると思われます。
作品情報
制作年:1969(昭和44)年 第55回光風会展
材質・形状:木・桐粉・胡粉
サイズ:65.0cm×26.0cm×17.5cm