奥田小由女作品

追憶(ついおく)

前年発表した《或るページ》に続く、紙が踊るような造型の中をたゆたう女性像が印象的な作品です。女性が空間の中を漂うように舞う姿は、後のレリーフ調の作品にも受け継がれていく、作家の代表的な造型のひとつです。

右側にある、空間を断ち切るかのように鋭く入った切れ込みが、柔らかくゆらめいている作品に異質な緊張感を与えています。桃山時代の茶人が火割れや傷の入った茶陶器にわびさびを超えた不規則の面白味を見出したような、日本的美意識の系譜ともいえそうです。

白を基調とした作品群には、作家の想いや自然の現象といった、形を持たないものを造形にて表現されているのが特徴です。するどく角張る造型と、緩やかにたゆたう女性という、ある種相反する表現が混在した白の時代の典型的な作風といえます。

作品情報

制作年:1973(昭和48)年 第59回光風会展
材質・形状:木・桐粉・胡粉
サイズ:57.0 cm×70.0 cm×36.0 cm

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