白雲赤嶂（はくうんせきしょう）

縦に細く長い画面が、紅葉に覆われた山に一層の険しさを演出しています。山の中腹にたなびく雲が叙情的に描かれ、その雲によって二分されるように対を成した構図、煌々と照らし出される山の頂上と、滝によって強調される深い陰りを帯びた山裾が、単なる風景画には見えない象徴性を感じさせます。

この作品を発表した頃に、同じように朦朧とした表現の絵をいくつか発表しています。その一連の作品は新朦朧体と評され、現実をありのままに描き出す写実よりも、画家の精神・対象の本質を表現しようとする写意にまさった作品を特徴づけるものと言えましょう。

作品情報

制作年：1987（昭和62）年
材質・形状：紙本彩色・額装
サイズ：222.0cm×125.0cm