奥田小由女作品
晨(あした)
女性の身体が組み合わさったこれまでの造型と比べると、この作品は何かが女性を包み込むようであり、人間像の具象性と全体像の抽象性が強調されています。伝統という文脈から飛び出した、画期的な人形作品といえるでしょう。
なめらかな曲線と鋭いエッジの共存する、天然とも人工ともつかない世界観の中に在る二人の女性が見つめる上方には何が見えているのでしょうか。題名の「晨」とは早朝を意味する言葉であり、夜明けのイメージを表わしているのかもしれません。
木彫の上から丹念に胡粉を重ね塗ることで生まれるなめらかな造型、どこか力強さを感じさせる量感を持ちながらも、静かで繊細な雰囲気をも感じさせるのは、作家の特徴ともいえる彫刻的な形作りと工芸的な表面仕上げを併せ持つ制作行程の顕れといえるでしょう。
作品情報
制作年:1971(昭和46)年 改組第3回日展
材質・形状:木・桐粉・胡粉
サイズ:87.0cm×32.0 cm×26.5 cm